最近の電源事情が凄いことになっている件

さてこれは何の波形写真でしょうか?

答えはタイトルに出てしまっているのでクイズにはならないのですが……。

そうです、ACコンセントから供給されている電源の波形です。ただし、スライダックで電圧を落としているので絶対値は異なります。

とにかく先っぽの削れ方が尋常ではありません。

これはもう正弦波(サイン波)ではありません。通常アンプの電源部は正弦波の先っぽの所で充電するので、この波形では本来の整流電圧が得られない可能性すらあります。

アンプなどを設計する際は電源電圧の変動を+-10%くらいは考慮していると思いますが、この波形ではそれでは不足する可能性すらあります。

3月初旬の寒い時期に撮ったので、いろんなヒーター関係の電力の使い方で尖頭部のみ消費しているせいなのかもしれません。

数年前にも観測したことがありますが、その時は正弦波の片側のピークだけが少し削れていた程度で、これほどひどくはありませんでした。

これだけひどいと正弦波の先っぽを補足するACケーブルなどがあれば効果があるかもしれません。

 

イベント開催決定 ーオーディオデザイン15周年記念イベントー

オーディオデザイン社は今年で創立15周年を記念してイベントを開催します。

日時:7月6日(土)午後1時半から

場所:オーキッドミュージック・ホール(二子玉川駅3分)

内容:井上先生、小林先生による試聴講演/オーディオデザイン社によるデモ他

お申込みはこちらまで

チップ部品の表面実装に適した拡大鏡はこれだ -さんざん試した結果、ついに見つけたー

はじめに

最近の電子部品は小型化されている。性能の良いDACチップはピッチの狭いパッケージだし、高周波特性の良い部品も必然的に表面実装部品です。表面実装というのは基本的に自動実装でハンダを付けるもので、最低でも2000個作る必要があります。

試作レベルでも自動実装機にセットするのに最低100個は作らないとだめと言われるので、最初のテスト機は手ハンダということになります。手で半田付けをする際はいくら目が良くても拡大鏡が必要です。DACチップなどは0.5mmピッチで0.2mm幅の端子の隙間が0.3mmと極小だからです。

拡大鏡として必要なこと

ここで拡大鏡が必須になるのですが、いままでさんざん試してこれというものがありませんでした。拡大鏡に要求される要件は次のとおりです。

倍率 倍率は7-20倍が必要です。倍率が大きすぎるとチップ全体が見えないので、半導体チップ基板に位置を合わせる際には7倍、端子の半田付けの状態を確認するにはx20以上が適切です。

対物距離 対物レンズと観察物の距離が取れないと、コテが入らないので半田付けが出来ません。最低でも5cm位欲しいところです。

焦点深度 焦点の合う幅がないと斜めにして半田付けの状態などを確認する際にしんどくなります。

視野の広さ 視野が光学顕微鏡の様に狭いと、目標の位置を探すだけでも大変です。

 

 

 

 

 

 

 

試したいろいろな拡大鏡

1. ルーペタイプ

ルーペもほとんどすべて試したが万能のものはありませんでした。真ん中下のレンズは京葉光器のワイドフィールドアクロという収差補正をしたルーペで(約1万円した)、倍率はx7。収差も小さく、一般のルーペとは次元が違いました。非常に良く見えたのですが、いかんせんハンダコテがなかなか入らなくて惜しい。

2. ヘッドルーペ・メガネルーペ

左から
ヘッドルーペ(目を近づけないと見えないので使いづらい)
ハズキルーペ(倍率が足りないx1.8)双眼ルーペ。口腔外科用のメガネですが、これは焦点距離が長く、背筋を真っ直ぐにしても見る。但し倍率が足りないのと(x3.5)、ちょっと頭を動かすと視点が大きくずれるので実用性がありません。

3. 顕微鏡タイプ

顕微鏡タイプの拡大鏡で試したのはこの3つのタイプです。

左から
ズーム式(x7-45)実体顕微鏡
Artech実体顕微鏡(x10)
USB顕微鏡(7千円位)

ズーム式(x7-45)実体顕微鏡はズーム倍率を変えても焦点がほとんど変化しないので非常に便利。焦点深度(焦点の合う範囲)が深いので基板を斜めにしても見やすい。

ただしズーム式顕微鏡はガタイがこんなにでかい。x7でチップ全体が見えるので、基板への位置合わせに丁度よい。端子の半田付けの際は倍率のツマミを回すだけで(焦点のツマミは触らず)端子部がZOOMされるので使い勝手が非常によろしい。一度使うと手放せない一品です。ただし日本製を新品で購入すると10万円近くします。写真の物は中国製の直輸入物で新品で1万5千円、送料5千円くらいでした。一部ネジが無かったり(ネジ穴だけある)、一部のネジが曲がっていたり、更には取説が入っていないなどひどいのですが、これでも立派に見えました。LEDの調光リングもついていて、これも非常に具合が良いです(日本のメーカーさんごめんなさい、こうして日本は負けていくのですね・・・、でも価格差7倍の魅力にはわたしは勝てない・・・・・ので、製品で還元します)。

 

 

こんな感じで使います。この顕微鏡はメガネを掛けたまま観察できるので、老眼でもまったくOK。

 

低倍率、カメラの撮影上視野が狭いのですが、実際にはチップ全体が見えています。

 

 

 

高倍率、半田付けの状態がよく見えます。ココから基板を傾けて、端子とパターン間のハンダの状態も確認可能。

4. ミラータイプ

 

ちょっと変わったものとしてミラー式拡大鏡があります。公称x10ということで購入してみましたが、実際の倍率は2,3倍がいいところ。レンズと違って色収差がないのでよく見えるのですが、いかんせん設定がむづかしい(レンズと違ってまっすぐ置いたら見えない)。それに位置をちょっと外れると猛烈に歪む。決定的なのはミラーなので反転して映ること。上下正しく見るために、ミラーを2つ繋いで試しましたが、ミラーの設定が難しすぎて実用性なしでした。

 

結論

挟ピッチ半導体の表面実装を何度かやる必要がある方は、迷わずズーム式実体顕微鏡を購入することをお薦めします。

「わが巨人軍は永久に不滅です」といったのは長嶋さん、「A級アンプも永久にスイッチングします」と言ったのは私です

A級動作のパワーアンプはスイッチング歪がないので音がいいというのはオーディオを趣味とする方にはいわば常識かと思います。

そのA級アンプですが、実はどんなA級アンプも実はスイッチングしているのです。といったら「そんなバカな」と思われるでしょう。それでは、アンプの性能などを見ていてA級アンプなのにやけに歪が多いな(AB級よりも多かったりする)と疑問に思われたことはないでしょうか?

もちろんA級アンプの音質的なメリットは出力段がスイッチングしないというだけでなく、結果的にトランスの容量や出力トランジスタや放熱器も大型になるなどの物量投入の効果もあるので、A級アンプの音質がいいという話があるのはわかります。

最近、よくよく考えてみるとA級アンプもスイッチングしているなーということに気づきました。

パワーアンプの動作を説明する簡単な回路図

この図はパワーアンプの簡略化した回路図です。電圧増幅段の後に電力増幅段があってスピーカーに接続され、トータルにNFBが掛かっています。これで電力増幅段のアイドリング電流が数AあればA級動作することになります。

ただ、実際にはこの回路ではスピーカーを駆動できないのです。スピーカーを駆動することまで考えて描いた簡単な回路図はこちらになります。

A級動作もグラウンドを含めて考えると汚れている

何が違うかというとマイナス側の回路です。最初の回路図ではマイナス側に電流を供給する部分が欠けているのです。マイナス(グラウンド)側は単に入力信号のマイナス(グラウンド)に接続するだけではだめで、大電流を供給できる回路に接続する必要があります(電力増幅回路のリターン側という言ったりもします)。

電源部は電源トランスからの電圧を整流して大型の電解コンデンサに接続して直流化しています。スピーカーのマイナス側はその正負2つの電源コンデンサの中点に接続され、このG点から電流が出ている(入っている)のです。このG点グラウンド部というのは100Hz(電源周波数の倍)の正弦波で充電されたときに発生する脈流成分なので、実際には数kHz位までの成分を含まれています。

この電源部のリップル成分はプリアンプなどでは安定化電源を使用すれば問題になりません。ところがパワーアンプでは安定化しないので、数Aのリップル電流に起因した成分は結構大きなものになります。回路図上では発生するように見えなくても、実際にはアース電位にもリップル成分が混じるので、結果的にこれは残留歪となります。

さらに悪い事にA級アンプは無信号時に出力段に電流が一番多く流れているので、無信号時のリップルノイズ(残留歪)が大きくなる可能性すらあるのです。

A級アンプといえども、その回路(あるいは動作)の原理だけを考えていると、理想的に見えても、実際にはいろいろな事が影響していてそう単純ではありませよという話でした。

アナログ回路のポケットガイドという範疇を超えている -これはもう名作では-

テキサス・インスツルメンツ社(TI)で出したアナログ回路のポケットガイドがすごく良く出来ています。ポケットガイドといっても100ページあるのでちょっとした教科書と言った感じです。

アナログ回路はもちろん、デジタルの補数まで、自分の頭のなかでちょっとあやふやなことまで非常に解りやすく要所々々が解説されています。また、日本語訳もしっかりしています。

TIはデバイスに魅力的なものを数々出していることはもちろんですが、そのデータシートが解りやすく、推奨基板レイアウトも掲載されていて、使用する者にとってありがたい会社です。

この点は逆に日本のデバイスメーカーのものは、デバイスが魅力的でもデータシートが意味不明で、クイズの様になっている事が多いのと対照的です。

是非一度、このポケットガイドをのぞいてみてください。

Analog Engineer's Pocket Reference e-book

こちらからダウンロードできます。

目次は次のとおりです。

目次
Texas Instruments Analog Engineer’s Pocket Reference 5
換算 ....................................... 7
物理定数 .............................................8
よく使われる10 進接頭辞 ......................................9
メートル法の換算 ..........................................9
温度の換算 ........................................... 10
誤差の換算(ppmとパーセント) .................................. 10
ディスクリート部品 ................................. 11
抵抗のカラー・コード ....................................... 12
抵抗値の標準数 ......................................... 13
実際のコンデンサのモデルと特性値 ................................. 14
実際のコンデンサの周波数特性 .................................. 15
コンデンサの種類の概要 ..................................... 16
容量値の標準数 ......................................... 17
コンデンサのマーク表示と許容誤差 ................................. 17
ダイオードとLED ........................................ 18
アナログ ...................................... 19
コンデンサの式(直列、並列、電荷、エネルギー) .......................... 20
インダクタの式(直列、並列、エネルギー) .............................. 21
コンデンサの充電と放電 ...................................... 23
RMS 電圧と平均電圧の定義 .................................... 24
RMS 電圧と平均電圧の例 ..................................... 24
対数計算の公式.......................................... 27
デシベル(dB)の定義 ....................................... 28
対数目盛 ............................................ 29
ポールとゼロの定義と例 ...................................... 30
時間遅れと位相遅れ ........................................ 34
アンプ ....................................... 35
オペアンプの基本構成 ...................................... 36
オペアンプの帯域幅 ....................................... 41
フルパワー帯域幅 ........................................ 42
小信号ステップ応答 ........................................ 43
ノイズの式 ........................................... 44
位相余裕 ............................................ 48
開ループSPICE 解析による安定性評価 ............................... 50
計装アンプのフィルタ ....................................... 53
プリント基板(PCB)と配線 .............................. 55
PCB の導体間隔 ......................................... 56
PCB の内層パターンの自己発熱 .................................. 57
PCB パターンの抵抗(1oz および2oz Cu) ............................. 58
パッケージの種類と寸法 ...................................... 60
PCB の平行平板パターンの容量 .................................. 61
PCB のマイクロストリップの容量とインダクタンス ........................... 62
PCB の隣接する銅箔の容量 .................................... 63
PCB のビアの容量とインダクタンス ................................. 64
一般的な同軸ケーブルの仕様 ................................... 65
同軸ケーブルの式 ........................................ 66
各種配線の単位長さあたりの抵抗(AWG 別) ............................. 67
各種配線の最大電流(AWG 別) .................................. 68
センサ ...................................... 69
温度センサの概要 ........................................ 70
サーミスタ ............................................ 71
測温抵抗体(RTD) ........................................ 72
ダイオードの温度特性 ....................................... 74
熱電対(J とK) ......................................... 76
A/D 変換 ..................................... 81
2 進/16 進変換 ......................................... 83
A/D 変換とD/A 変換の変換特性(LSB、データ・フォーマット、FSR) .................. 84
量子化誤差 ........................................... 90
信号対ノイズ比(SNR) ...................................... 91
全高調波歪み(THD) ....................................... 92
信号対ノイズ比+歪み(SINAD) .................................. 94
有効ビット数(ENOB) ....................................... 94
ノイズフリー分解能と有効分解能 .................................. 95
セトリング時間と変換精度 ..................................... 96

古くて新しいデジタルオシロで開発が加速するかも

今回は測定器の話をさせていただきます。

オシロは大事

アンプなどの解析にはオシロスコープが必須です。オシロは何台か持っていますが、もっぱら使用しているのはアナログオシロです。波形の記録にはデジタルオシロが必要で以前はパソコンに取り込んでサーマルプリンタなどでシール式の感熱紙に印刷していました。その頃のノートはこんな感じです。

DCPMA-parts2 044_ociloold

デジタルオシロの波形をパソコンで取り込んで編集後、 サーマルプリンタで印刷してノートに貼り付けていた

ただこの方法は面倒で、気合が入った時にしかしませんでした。もっと簡単にオシロの波形を残したかったのですが、最近は面倒なので自分で波形を書いていました。超原始的ですが、これが一番早いのです。

DCPMA-parts2 050_note2

その内、波形は手書きになった

オシロの波形記録の変遷

このオシロの波形を残すために、あれこれ試行錯誤してきました。

  1.  USBオシロ(波形データをボタン一つでPC に転送できるもの)–>PC で画像を整えて印刷するのが大変、オシロそのものが使いにくい

2. オシロの画面をでカメラで撮る、その後PCに取り込んで、サーマルプリンタで印刷–>いちいち操作が面倒(写真中央上)

3. チェキ(ポラロイドカメラ)で撮る:画面が小さすぎてダメ–>接写レンズを使う:不鮮明でダメ視界も狭い(写真右)

DCPMA-parts2 041_ocilophoto

左が新しく買ったプリンタ内蔵デジタルオシロの印刷結果、 右がチェキに接写レンズをつけて撮ったアナログオシロの波形 真ん中下がスマフォで撮ってスマフォ用写真印刷機でプリントしたもの

4. スマホ専用の写真印刷機でとる–>これは結構いける(写真中央下)

5. プリンタ内蔵オシロ–>チョベリグ(写真左)

これが一番良かった

最終的に行き着いたのが5のプリンター内臓のオシロスコープです。これがあるのは知っていましたが、結構お高いので敬遠していました。最近だめもとで中古で購入してみたら、これが予想以上に良かったのです。ボタン一つできれいに波形コピーが出来ました(ちょっとサイズがおおきすぎるのですけどね)。YOKOGAWAのDL1540というデジタルオシロで、上部に感熱プリンターが内蔵されています。帯域も150MHzあるので十分です。操作性でアナログオシロにはチョット負けますが、いわゆる4-5万円の安いデジタルオシロよりも遥かに使いやすく、実用に耐えます。

DCPMA-parts2 038_DL1540

オレンジ色の波形のオシロにプリンタが内蔵されていて ボタン一つで波形のコピーが上から出てくる

 

 

今後、製品開発がますます加速するかもしれません。