アンプの音質を向上させるという事

 アンプの音質について思うところがあります。
 よく個人の方の研究にしろ、メーカーの宣伝にしろ、ある部品を変えて劇的に音質が変化したように書かれていることがありますが、果たして本当にどの程度音質が向上(変化)しているのか、不思議に思うことがあります。
 アンプの性能はもともとそこそこの性能になっているはずですので、部品ひとつを代えたぐらいで、はっきり変化しない事の方が多いのではないかと思います。アンプの音質が良くなったと認識できるためには、経験的にいってある電気(物理)特性が10倍くらい向上しないといけないのではないかと思います。
 それでは弊社のアンプでどこが通常の10倍以上良くなっているかといえば、
(1)アンプの周波数特性–>10倍程度(~5MHz)まで伸びている
(2)トランジスタの動作点固定–>通常数VのVce変動を0に
(3)トランジスタの浮遊容量低減–>ミラー効果排除により浮遊容量1/100
(4)電源のインピーダンス特性が低い–>10mΩ(通常の安定化電源の1/100程度)
(5)安定化電源の応答速度–>100KHzまで一定(3端子レギュレータの100倍位高速)
と10-100倍に改善した部分が数箇所あります。
 これらの性能は直接的に音質に効く要素ではないかもしれませんが、だからこそ、このくらい改善して初めて、お客様に初めて「音質が驚くほどよい」といわれるようになります。
 (1)の周波数特性がいいことは原理的には聴感上関係ないのですが、これだけ周波数特性が良いと10KHzにおいても歪率がまったく劣化しないという副次的効果があります。
 また、例えばアンプ出力部についているカップリングコンデンサーですが、この部分が電解コンデンサーであれば、音質はにごります。ここをフィルム系のコンデンサーにすると透明度、解像度が向上します。交換直後は比較的はっきりわかりますが、慣れてくると気にならない程度の音質の差です。
 電解コンデンサーとフィルムコンデンサーでは交流のインピーダンス特性にちょうど一桁差があります。逆にフィルムコンデンサー内の比較では電気インピーダンス特性の差は比較的小さく、音質の差もフィルムコン内であれば判別するのが難しい程度の差なのです。この様な音質の差と電気特性の相関はアンプの音質と特性全般に言えるのではないかと考えています。
 言い換えるとアンプの音質を良くしようと思ったら、10倍向上できる要素がいくつあるか?と解析するところから始まるのではないでしょうか。

パッシブプリとDCプリアンプの位置づけ

 パッシブプリアンプ、DCプリアンプともに従来のプリアンプと入れ換えていただければ音質は大幅に向上します。またCDとパワーアンプを直結して御使用の場合(パワーンアンプのVRで音量調節をしている場合)、プリアンプとの入れ替えたときほどの劇的な効果ではない様ですが音質が良くなったとお聞きしています。

 パッシブプリアンプとDCプリアンプの音質差ですが、どちらが良いかといわれれば、DCプリアンプの方が音質は良いと思います。実際、弊社パッシブプリを御使用になられていて、弊社DCプリアンプと聞き比べた場合、DCプリアンプの方が良かったという声をいくつか聞いています。

 ただその差は従来のプリアンプと入れ換えた時ほどインパクトの大きいものでは無いと思います。感覚的にいって従来のプリと弊社パッシブプリ/DCプリと入れ換えた時の音質差が10として、弊社パッシブプリから弊社DCプリアンプに入れ換えた時の音質差は2-3くらいだと思います。DCプリアンプの方が、パッシブプリよりも音楽の躍動感、ダイナミックさという点で優れているように聴こえます。

 また、パッシブプリアンプは出力インピーダンスが高いためか、使用するラインケーブルによって音質が多少変わりますが、DCプリアンプではラインケーブルの音質差は感じ取れません。DCプリアンプの方があらゆるケーブルに対してドライブ能力が高いのかもしれません。

プリアンプの濡れ衣

一般に、弊社プリアンプを御使用いただくと、音の鮮度、解像度が大幅に向上します。まれに良くなかったという声を頂くことがあります。それは以下の理由によるものと考えています。

(1)再生装置に非常に癖のあるものを含む場合、又はプリアンプで音質調整をしている場合
 もともとの再生装置に非常に癖があるものを御使用されている場合、逆にその癖がはっきり聞こえてしまい、音質が悪く聴こえることがあります。実際にあるところで、ある真空管パワーアンプと組み合わせて聞き比べた場合、通常のOPアンプを使用したプリアンプで聞いた方が、聞きやすい音になっていました。弊社プリの方がそのパワーアンプの癖(高域がきつく付帯音のような音がまとわりついている)をそのまま出してしまいます。OPアンププリを使用した場合でも再生音自体は決して良いものではないのですが、OPアンプで中高域を濁して結果的に多少聞きやすくなったという程度でしたが・・・。(録音の悪いCDは本格的オーディオ装置よりも、むしろラジカセで聞いた方が粗が目立たないのと同じようなものかもしれません)

(2)再生装置が従来のプリアンプに合わせたセッティングになっており、そのまま無調整で試聴した場合
 弊社プリは通常のプリと帯域バランスが多少異なります。例えばバイオリンなどの楽器の音もきれいに分離してはっきり聴こえるので、あたかも中高音のレベルを少し上げたかの様な聴こえ方になります。低域もボーンボーンというベース音が、ビンビンという様に締まった音に聴こえるのです。結果的に従来のプリアンプと入れ換える場合は中高音の再生レベルを少し下げた方がバランスが取れる場合があります。レベル調整ができない場合はSPセッティングを多少調整すると良い結果が得られます。
 言い換えると元々従来使用されていたプリの中高音がつぶれているので、結果的に中高音の再生レベルを上げた設定になっているケースが多いのです。その状態で弊社プリをいれて音のバランスが悪いなどと言われても・・・・。
 実際に音質が今ひとつといわれてしまう割合はパッシブプリで5%、DCプリで10%程度です。DCプリの方が音質が良いのになぜDCプリの方が良くなかったといわれてしまう結果が多いかというと、パッシブプリをご自宅にてご試聴いただいた場合、音質に疑わしい点があってもパッシブプリ本体ではなく、ご自身の再生装置に問題があるのではないかとお考えになるのに対し、DCプリをご自宅で御使用し再生音に癖が出た場合、プリアンプのせいにされてしまうからだと思っています。