最近のカートリッジの音質評価

レコード用のカートリッジを探す際に、特に最近のカートリッジについては意外と参考になる音質評価が見当たらないようです。ここ数年最近のカートリッジを購入して試してみました。それらの音質をまとめてみましたので参考にしていただければ幸いです。

以下のカートリッジは実際に購入して聴いたもので、メーカーからの貸し出しなどではありません。ですのでユーザーとしての正直な感想になります。カートリッジの音質はイコライザアンプによって大きく変わります。あくまで当社の最新フォノイコによる試聴結果ですので、一般的なフォノイコとは傾向が異なるかもしれません。

試聴結果まとめ

外観メーカー型式価格音質お薦め度(5点満点)
SUMIKO
perl(MM)
14,800円中庸だが変な
癖なく万能 
3.5 
価格を抑えたい時に
オーディオテクニカ
VM520EB(MM)
16,000円昔のAT-13相当?3
悪くはないです
オーディオテクニカ
VM720SH(MM)
50,000円凄まじい解像力4.5
システムによっては高域よりに
GRADO Statement Sonata 2(MI)64,200円ゴリゴリした低音が魅力4.5
一度聴いてほしい
オーディオテクニカ AT33PTG(MC)40,000円華やかな音4
装置で音が変わります
フェーズメーション PP-300(MC)135,000円細みの音3 
GOLDRING Ethos
(MC)
185,000円弦の音が美しい5
隠れた名器
(隠れてないが)
カートリッジの評価一覧(価格も考慮したお薦め度であくまで筆者の好みです)

試聴装置

試聴時に使用したシステムです。

  • プレーヤー GT-2000 YAMAHA
  • イコライザアンプ DCEQ-1000
  • プリアンプ DCP-240
  • パワーアンプ DCPW-240
  • スピーカー Dynaudio Confidence C4

カートリッジの試聴評価

SUMIKO Pearl

価格14,800円(税抜)
方式MM型
出力電圧3.5mV
針圧2.0g
楕円針

SUMIKOのカートリッジはあまり馴染みがないかもしれません。このパールというモデルは1万円程度で買えて非常にリーズナブルです。その音は特に変な癖がなく、非常に聴きやすいものです。解像度が特に高いというわけではありませんが、バランスよくレコードの音を再生します。予算に限りがある場合にはお勧めのモデルです。突出している部分はないものの非常に良く出来ていて好感の持てるモデルでした。 SUMIKOというメーカーのもっと高級なカートリッジも聞いてみたいと思うような良い出来映えでした。

オーディオテクニカ VM520EB

オーディオテクニカ
VM520EB
価格16,000円(税抜)
方式MM型
出力電圧4.5mV
針圧2.0g
接合楕円針

一言でいうとまっとうな低価格帯のMMカートリッジの音です。特におかしな音は出さず、ただ全体的におとなしく感じます。当社のイコライザアンプをもってしてももう少し情報量か迫力というものが欲しくなります。半面きつい音、嫌な音は出さないという点では優等生です。昔の型番でいうとAT-13に相当する音ではないでしょうか?その上のAT-15クラスではもっと解像度と迫力、そして繊細さがあったように感じます。


オーディオテクニカ VH750SH

価格50,000円(税抜)
方式MM型
出力電圧4.0mV
針圧2.0g
シバタ針

ボディーが金属になって針が柴田針になったモデルです。 このカートリッジの音は VM 520とは大きく異なります 。情報力が圧倒的に多くなり、非常に細かい音まで拾います。 ただし全体のバランスが低域よりも高域寄りになります。 使用しているオーディオシステムの 再生音が全体的におとなしい場合、非常によく合うでしょう。逆に再生家のシステムが高解像度の場合(あるいは通常のバランスでも) 少しうるさく聞こえるかもしれません 。そういった相性はありますが、この解像度、繊細さの表現というのは圧倒的で、非常に魅力的なモデルです


GRADO Statement Sonata 2

価格64,200円(税抜)
方式MI型
出力電圧1.0mV
針圧1.7g
楕円針

GRADはあまり知られていないかもしれません。ところがこのカートリッジものすごく魅力的な音です。このカートリッジは M M 型というよりも、MI型に分類されます。磁気回路の中で鉄の円盤がカンチレバーについていて、それが動くことによって電圧を発生するという仕組みです。その音は一言で言うとゴリゴリした 非常に力強い音です。よく DL-103の音を低域よりの安定感のある音と言いますが、これはさらにはるか上を行くものです。音の輪郭を極太のマジックで書いたような音で、聴いていて気持ちがいいのです。こういった音の傾向は他のカートリッジでは聴いたことがありません。ただ少し高域の方に若干のキラキラ感といいますか数 kHz 以上を1,2dBレベルを上げたような きらびやかさがあるのですが、それが若干耳につくかもしれません。とはいえ、このカートリッジの魅力は聞いてみれば虜になるほどのもので、もっと広く知られてもいいモデルだと思います。それとこのカートリッジのインダクタンスは通常のMM型の1/10程度ですので、いわゆるキャパシタンスを変えても音質は変わりません。



オーディオテクニカ AT33PTG

価格40,000円(税抜)
方式MC型
出力電圧0.5mV
針圧1.8g
マイクロリニア針

PT 33は皆さんもよくご存知のモデルだと思います 通常非常に繊細な音が得意で低域の力強さは 少し劣るというのが今までの感触だったのですが、イコライザーアンプを当社のDCEQ-1000にしてからその評価はガラリと変わりました。結構力強い低音も出るのです。低音から高音まで常にバランスよく出て、どちらかと言うと高域が華やいだ感じに聴こえる様になりました。この値段でこれだけの音というのは非常にコストパフォーマンスが良いですし、この価格帯のMCとして抜群のコストパフォーマンスだと思います。


フェーズメーション PP-300

価格135,000円(税抜)
方式MC型
出力電圧0.28mV
針圧1.85g
ラインコンタクト針

フェーズメーションのカートリッジは最高位モデルの PP-2000などがよく雑誌の試聴室などで使われており、業界の標準となっている感があります。今回下位のモデルですが PP- 300というものを購入して聞いてみました。ボロンカンチレバー にラインコンタクト針で、高級カートリッジのお手本のようなモデルです。またボディは金属切削で作られているようで比較的重いカートリッジになっています。比較的繊細な音で細かな音も拾いますし、音が澄んでいて濁らないのは長所です。ただ若干、音の線が細い傾向があります。それとわずかではありますが、高域に独特のキンキンした音がかすかに乗っている感じで、おそらくこれはボディが共振していると思います。 試しにボディに防振テープを貼ってみるとそのキンキンした感じが少なくなりますので・・・。金属のボディというのは何らかの ダンピングしないと、いくら固いといっても鳴いてしまうのでしょう。 ゴールドリングのEthosの方がすごく魅力的に感じます。値段は10万円とリーズナブルだと思いますが(むしろ上位機種と比べると安く感じますが)、特に強い魅力は感じません。

また残念なのはパッケージングで、取り出しにくいだけでなく、カートリッジのカバー蓋が ちゃんと収まらないので(使用しないときは)いつも輪ゴムでカバーを取り付けています。


GOLDRING Ethos

価格185,000円(税抜)
方式MC型
出力電圧0.5mV
針圧1.75g
ラインコンタクト針

ゴールドリングの ethosという最上位の MC カートリッジになります。無線と実験誌で先生が非常に褒めていたので試しに購入してみました。このカートリッジの特長として、本体の磁気回路にネジが打ってあって、接着剤ではなく機械的に締め上げられていることが挙げられます。その効果でしょうか、 その音は弦の音が大変綺麗です。大音量の音溝も難なくトレースし、また高音から低音までのバランスが素晴らしいです。余計な脚色は一切せず、本来の楽器の音を正確に再現し、低域の制動力もあります。大音量で混濁もなく、音が躍動するようで迫力も出ます。という全く非の打ち所がないようなカートリッジです。私は普段このカートリッジを使用しています。現在市販しているなかで一番気に入っています。少し高価ですがその 値段の価値は十分にあるカートリッジです。

またゴールドリングのカートリッジは非常にパッケージングが丁寧な作りで、(価格のせいもあるのでしょうが)お客様を大事にしとしているという姿勢がよくわかりました。カートリッジの世界ではパッケージングと音質に強い相関があるのは興味深いところです。

磁気回路をビスで固定している

以上ここ数年聴いたカートリッジの感想でした。参考にしていただければ幸いです。

スピーカーをいじっていたら、はまってしまいました(その1)

アンプを作って売る立場にいるので、スピーカーは一般的なものを使う必要があります。

私が普通のオーディオマニアとして楽しむ立場だったら、たぶんマルチアンプ駆動の凄いSPシステムを作っていると思いますが、アンプメーカーなのでそうはいかないのです。

現在メインはDynaudioのC4を使用していますが、これは大きくて非常に運搬が大変なので、展示会などではもう少し小さいSPを使いたい時があります(何しろC4を運ぶのは大変なのです)。ただ展示会などの会場はだだっ広いことがあり、そういう環境で小さいブックシェルフなどでは完全に役不足になることが多いの困りものです。

そんな悩みが以前からあって、何かいい小型SPはないかといくつか物色していました。そうしたら、ちょっとはまってしまいました。

ElacのBS-312

以前にElacのBS312というスピーカーを購入しましたが、このSPは音色は素晴らしいのですが、ウーハーが12cm位しかないので、超低域の入ったそーすではどうしてもウーハーが振り切れてしまいます。

ElacのBS243

そこでウーハーがもっと大きいBS243を買ってみました。そうすると低域が振り切れるということはなくなりましたが、ツイーターがJE

TⅢと旧世代でちょっと高音がうるさいのです。そうすると今度はもっとウーハーが18cmと大きいC330CEというものに興味が移り(低域が豊かになる分高域のうるささも目立たなくなり、しかもキャビネットも剛性が上がってよくなるかと)欲が出て中古で買ってみました。

C330CEは低域がよくなり幾分高音のうるささも低減して入るのですが、やっぱりうるささはあります。そこで原因を探るべく周波数特性を計ってみました。

周波数特性を計ってみました

その結果がこちらです。部屋の影響を少なくするために50cmの距離で測定しています。部屋で測定した割には非常にフラットで申し分ありません。ただよく見ると1kHz以上に比較してウーハー帯域では凹凸の平均値で見ると、高域に対してややレベルが低いことがわかります。

そこでツイーターへの入力に抵抗を入れてツイーターのレベルをさげてみました。ウーハーに抵抗を入れるとダンピングが悪くなりますが、ツイーターの場合は元々音響抵抗でダンピングされているので、制動が悪くなることはありません。実際の写真がこちらになります。

 

 

 

 

2オームの抵抗を入れた場合の特性がこちらです。

 

高域が2dB程度落ちていることがわかります。

 

さらに4オームの抵抗を入れたのがこちらです。さらに高域のレベルが下がっています。

聴感上は2Ωと4オームの間位がちょうどいいと思います。ただそれでもちょっとうるささが残ります。

ツイーターの周りの丸い金属部分を

330CEのツイーター部にアルファゲルシートを張ったところ

指で押さえるようにすると、うるささがほぼ気にならないレベルになります。おそらく旧世代のJETⅢではツイーターが共振しているのだと思います。そこでこのシルバーの丸い金属部分とさらにその周りの黒い金属部分にアルファゲル(5mm厚)のシートを張り付けてみました(これはもちろん後で取ることもできます)。そうするとJETⅢのうるささがほとんど気にならなくなりました。

 

 

330CEの過度応答特性

JETツイーターはハイルドライバー方式ですが、これの過度応答が素晴らしいことがわかりました。この図は累積スペクトル特性ですが、高域がすぐに止まっていることがわかります。

 

参考までに他のハードドームスピーカーの例を示すとこんな感じです。

JETツイーターの過度応答がいかに優れているかわかります。JETツイーターを使用したスピーカーは非常にさわやかで、見晴らしのいい音場を形成する特徴がありますが、こういった過度応答特性が貢献しているのかもしれません。

 

以上最近スピーカーにはまってしまった話でした。さらにはまった話を次回にしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

DAコンバーターの真性(intrinsic)ジッターを計ってみました

はじめに

DA コンバーターに置いてクロックジッターはとても重要な問題です。しかしながら定量的なデータはあまり見たことがありません。ここでは DA コンバーターとクロックジッターの関係について解説してみたいと思います。

クロックジッターとは

一般にクロックジッターとはデジタル回路のクロック信号における周波数のゆらぎのことを指します。 DA コンバーターなどのマスタークロック信号は水晶発振器ですが、この水晶発振器そのもののジッターを測定するには500万円クラスのデジタルオシロスコープが必要です。

ただ水晶発振器のジッターについてはその特性がメーカーのデータにつ

いていますので測定しなくても比較することが可能です。

このグラフは100MHzくらいの水晶発振器の中で、特に低ジッターのものについて1kHz付近の位相ノイズを比較したものです。数百円でもかなりジッターの少ないもの(-160dBc/Hzクラス)のものがあります。ただ一番低ジッターな水晶発振器では-180dBc/Hzというものがあり、これだと数十万円します。

クロックのジッターが DA コンバーターに与える影響

DA コンバーターにおいてはジッターの要素は2種類あります。一つはデータジッター、もう一つは イントリンシック(真正*)ジッターと呼ばれるものです。

(*真性というのは私がつけた訳です。)

データジッター

データジッターとはデジタル信号の非周期性に関わるもので、例えばSPDIFのデジタル信号を受信する時に必然的に発生するジッターです。これは根本的にクロックジッタとは異なるものですクロックがたとえ完全に正確であっても発生します。
このデータジッタを測定する方法は J テストと呼ばれ、これまでにもいくつか実測例が紹介されています。具体的には11.025 kHz に1 LSB の信号を混ぜてDACに入力し、その時の信号スペクトルを測定するものです。

真正ジッター

それに対して真正ジッターというのは DA コンバーターにおいてクロックのジッター成分によって発生する歪信号のことを指します。

クロックジッターがある場合 のDA コンバーターの出力への影響は、理論式があります。結論としてはクロックジッターの成分fjがあると、そのジッター成分の周波数+-fjだけ基本波fから離れたところに、サイドスペクトルf+-fjが発生します。そしてそのサイドスペクトルの大きさは、信号基本波fの周波数に比例します。ですので真正ジッタを測る際は

基本波信号の周波数をできるだけ高くして(20kHzで)測定します。

真性ジッターの測定例

こちらはオーディオプレシジョン社の技術ノートに掲載されているジッターの測定例です。 20khz の信号スペクトルの両サイドにジッター成分が検出されています。さらに離れたところにもノイズ成分があるのですがこれは左右対称ではないのでおそらくノイズであると考えられます。

次に最近の DA コンバーターについて、この真正ジッターを測定した例を示します。

左図は ES9038 Pro を使用した他社の DA コンバーターの真正ジッターの測定結果です。20khz の信号を入力しその付近でのサイドスペクトルを拡大して見ています。 20khz の両脇100Hzずつ離れたところにスペクトルが発生しているのがわかります。この DA コンバーターでは100ヘルツのクロックジッターがあるということになります。実はクロックへの供給電源が安定していないために100 L 成分のクロックジッターが発生しそれが DA コンバーターの出力に影響しているということになります。

次にこちらはオーディオデザイン社の ES 9038 Pro を使用したDAコンバーターのスペクトルです。 こちらは基本波のみ観測されていて、サイドスペクトルが一切発生していないことが分かります。すなわちジッターの影響がまったくが検出されていないということになります。

DAコンバーターのジッター成分

他社製DAコンバーターの場合

以上は基本波のサイドスペクトルからジッターの影響を見てみましたが、SYS-2722ではジッター成分を分析することができます。例えば先の他社製DACのジッタースペクトルがこちらです。赤線(左軸)がジッター成分ですが、100Hzの整数倍で大きなジッターが発生していることがわかります。

実はこの他社製DAコンバーターもかなり超低ジッターのクロックを搭載しています。この100Hzの整数倍というジッターは水晶発振器そのものの基本性能によるものではなく、水晶発振器の電源、あるいは実装技術の不備によるものです。このDAコンバーターのクロック波形を長周期で見てみると、100Hz位に相当する周期で振幅が揺らいでいます。この振幅のむらがジッターとなって影響しているのです。

当社製DAコンバーターの場合

一方当社のDAコンバーター、DCDAC-180のジッター成分はほとんど検出されていません。

終わりに

以上DAコンバーターのジッターについて解説しました。実際に調べてみると、予想とは大きく異なる結果が出てくるものです。

ジッター測定に関して詳細に知りたい方は下記をお読みになることをお勧めします。AudioPrecision社のwebサイトからダウンロード可能です。

参考文献:AudioPrecision社 Application note #5 ”Measurement Techniques for Digital Audio” , Julian Dunn

以上の話はこちらのコラム”オーディオにおけるジッターの話にもまとめてあります。

Dynaudio Confidence C4にオリジナルスタンドを付けてみました

Dynaudio Confidence C4を使用していますが、このスピーカは背が高い割にスタンドが狭く、結構フラフラします。輸送上スタンドを広くすることができないので最小にしているのでしょう。音響的にも好ましくないのでスタンドを広げることをずっと考えていました。

ただこのC4は視聴位置がスピーカー中央で、ただでさえ座って聞くとやや上から聞こえてくるので、これ以上高くすることは避けたいのですが、そうするとスタンドの取り付けようがありません。長年思案した末、考えたのが上から吊るす方式です。もともとのスタンド(下の黒い木製台座)には金属製のナットが埋め込まれていて、通常はそこにイモネジを挿入して下のスパイク受けで受け止める構造になっています。

考えたのはこのナットを利用して上にアルミ製フレームを固定して、その外部からスパイクを出すという方法です。その様子がこちらです。

結果は見事無事に収まりました。スピーカーを揺らしても下部のTAOC製スピーカー板台にピタリと吸い付くように固定されています。写真ではわかりにくいかもしれませんが、スピーカーは台座ごと3mm程度浮いています。スパイクの間隔でいうと倍になった程度ですが、固定されているしっかり感は10倍くらいになりました。フレームに使用しているのは、30mm角の高剛性タイプのアルミフレームで、加工後黒アルマイトしました。(もちろんスピーカーそのものには一切手を加えていません。)

スパイク受けをスプリング式のものも使用して試しましたが(全体的にふわふわ揺れる)、高音部はきれいになった感じがしましたが、低音域がかすかにゆるくなった気がしたので通常のスパイク受けに戻しました。

スパイク受けを設置するのも、外に出ているので一人で簡単にできるようになりました。オリジナルの状態ですとスパイクを設置するのに二人がかりでしかも位置を合わせるのが至難の技でした。

音も以前よりも空間表現が更に高まり、再生システムのグレードも全体的に上がったかのように聴こえる様になりました。

市販のスピーカーシステムはスタンドが狭目になっていますので(梱包を考えると必然的にそうなる)、こういった方法を試すのも良いかと思います。

あるES9038を使用したDACが研究材料として面白い

海外のサイトで販売しているES9038を使用したDAコンバーターを入手したのですが、これが研究材料として非常に面白いので紹介します。

ES9038を使用した最新最高性能のDAコンバーター?

ESS社のDACチップの最高峰のES9038Pro を使用しています。聴いてみると、音質も非常にいいと思います。繊細ながら押し出しの強さも合って、このDAコンバーターの購入者の評価がほとんど満点に近いのも頷けます。

同じチップを使用した大手メーカーの非常に売れている、二十数万円のDAコンバーターを試聴したことがありますが、それよりもずっと良いです。その大手メーカーのDACは貧弱な弱々しい音で、どこが良いのかわからないような音でした(それでも市場の評判はとてもいいようですが)。

この、海外サイトのDAコンバーターが音が良いのに何故面白いかというと、特性は良くないのです。このDAコンバーターはおそらく、この手の製品に精通した人が作っていて、その人はかなり技術のある人だと思います(ずぶの素人ではありません)。作りも多少外観に雑なところはありますが、基板の造りなどはプロ顔負けで、かなりいいです。

このDACのおかしいところ

1. 最大入力で振り切れている

このDACのおかしいところは、なんと最大入力SPDIFの0dB入力で振り切れています。これだけ振り切れていれば、聴いておかしいと気づくだろうと思われるかもしれませんが、意外とわからないのです。CDなどの音源も0dB付近まで信号が録音されているものはまれなので、普通のソースでは意外と気づかないのです。このDACの製作者はSPDIFの信号発生器を持っていないのだと思います。

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2. ジッター(?)の悪影響がひどい、ジッターというレベルではない

左の図は1kHzのスペクトル波形です。3kHzで-100dBのTHDがあり、このクラスのDACとしては一桁高いレベルです。

このDACはES9038のマニュアルに記載されている通り、OPアンプでIVコンバーターを形成しているのですが、このチップではOPアンプを使用すると、必ず歪が盛大に発生します。おそらくESSの設計者は(多分アナログのことは全くわからないので)そのことに気づいていない可能性すらあると思います。

それよりも気になるのは1kHz近辺の裾野のピークで、これだけはっきり見えるのは珍しいです。

10kHz の信号に切り替えて、そのスペクトルの裾のを見たのが次の図です。ちょうど100Hz間隔でピークがあります。前の図で確認してほしいのですが、この100Hz間隔のスペクトルはハムではありません。前の図で100Hz由来の成分は皆無ですから。

勘違いしないでいただきたいのですが、ジッター測定でよくある11.025kHz+1bitの元波形(原理的に一定間隔でピークが出る)ではなく、10kHzのサイン波形そのもののデジタル入力でこの裾野が出ていることです。ジッターというのはクロックのジッター成分そのものがアナログ信号出力に現れるとされているので、このクロックのジッター成分が100Hzであることを示唆しています。ただクロックのジッター成分が主に100Hzというのは聞いたことがありません。

3. その原因が水晶発振器のジッターというよりも、クロックの振幅の乱れから来ている

そのES9038に供給されているクロックの波形がこちらです。振幅の安定性を見てもら

DSC_0032

うために、わざと長時間の観察にしてあります。これを見てもらうと明らかなように、振幅がかなり荒れています。100Hzのジッター成分はクロックの周波数のゆらぎから来ているのではなく、振幅のゆらぎから来ているようです。

いい忘れましたが、このDACは超低ジッタークロックオプションを選択しています。市販品の中でも特別なクロックを搭載しているのです。折角そういったクロックを搭載しても、クロックの電源周りが貧弱だと性能が発揮されないということだとだと思います。

とはいえこのDACは普通の市販DACよりもかなり音がいいのですから、面白いものです。