ヨーロッパのコンサートホールで音楽を聴いてみた(3) -ウィーン楽友協会(ゴールデンホール)-

3つ目のコンサートホールはオーストリアのウィーン楽友協会(ゴールデンホール)です。
ここは音質が良いコンサートホールとして知られているようです。ほんとなのでしょうか?(それを自分の耳で確かめるのが今回の目的です。)

<日時・場所・曲目>
7/2(月)ウィーン楽友協会(ゴールデンホール)
演奏:ウィーン・モーツァルト・オーケストラ

曲目:
モーツアルト KV527、622,588,525,331、492、550、621、620
チケット代:89ユーロ(約9000円)
シート:9列目(前方の真ん中辺)
構成:
ベース1本チェロ3本バイオリン10くらい他と比較的小編成です。ほんとはフルオーケストラのものを聴きたかったのですが、日程の都合もありますので・・・。

観客:
40%くらいは中国人観光客(ツアーバスでやって来ています)、正装した人はほとんどいません、というよりほとんどが観光客です。冷房があまり効いていないので暑いです。

<ホールについて>
外観はヨーロッパの典型的な建築物という感じで重みがあります。
ウィーン楽友協会の外観

中に入ると、ほんとにゴールデン。日本で言うと金閣寺みたいなものか(もっと派手ですけど)。

前方を見るとこんな感じ(金ピカ)

天井も金におまけに絵まで書いてあります。バチカン宮殿程ではないにしても演奏会場にここまでする必要があるのかなって思うのは平民の考え方なのでしょうね。貴族の発想はわかりません。

天井もゴールデン

後ろも金

横も金、おまけに柱に必ず像がくっついています

各ホールのマイクセッティングも興味があったのですが、ヨーロッパでは前方位置の上方にケーブルを横にはわせて、小型のマイクを垂れ下げるのが普通みたいですね。
ホール前方の上方には横方向にケーブルがはられていてマイクが垂れ下がっています

観客が入ってくるとこんな感じです

<ホールの音質>
バイオリンの音が柔らかい。ふわ~とした感じで音が出てきます。こういう音の出方は聴いたことがありません。音量はスメタナホールほどは取れていないものの、大きい方に入ると思います。弦楽器の音色がとにかく心地よい。繊細さと柔らかさが両立している様な音。この音色は強いて言えば高嶋ちさ子さんの「around world」の音色に似ているかもしれません(あれは確かプラハの元レストランで収録したと思います)。ある条件が揃うとこういう音になるのかもしれません。こういうフワーとした音はオーディオ的には迫力がないという人もいるかも知れませんが、私は非常に心地よいいい音だと感じました。
それにピチカートがやはり非常にいいです。ズンズンと力強い、厚みのある音がします。

途中ソプラノ歌手の歌声もあったのですが素晴らしく声が通ります、歌手がうまいのかホールがいいのかわかりませんが、おそらく両方でしょう。ただどんなうまい人でもこういう音の響き方は他のホールでは無いのではないでしょうか。

やはりこのホールで感心したのは、スメタナホールと同様に木管楽器でクラリネットが素晴らしい。ソロで吹いているパートがありましたがクラリネットネットのソロで十分聴かせる事ができます。音そのものも大きいですし、音色の良さ力強さもあるんですね、感心しました。

音量自体はスメタナホールの方が大きかったのですが(編成が違うことを差っ引いても)、楽器の音色がいいのはこのホールです。

残響はやや長めで残響成分が聴こえます。演奏中にシャンデリアが綺麗です。モーツアルトの曲は単調で飽きることが多いのですが、ここでは楽器の音色そのものが素晴らしいので十分最後まで飽きずに楽しめます。

もう一度言いますが、とにかく弦楽器が一斉に弾きだしたときのふわ~とした音の出だしが物凄くいい、音色に酔える。こういう音を聴くと誰でも「あークラシックっていいな~」と思うと思います。
もう少し音量がとれれば言うことなしですね。

#44でコントラバス1本の演奏がありましたがピチカートが1本なのに十分大きな音を出します。全体的に低音と高音のバランスが素晴らしいです。太鼓は結構ビシビシ響きます。

観客マナー
ただひとつ残念な事は観客のマナーが悪いこと。何しろ演奏中に携帯で写真を撮るのでピカー、シャッタ音が「ちろりん」、とうるさくて音楽に集中できません。まあこの演奏は観光客向けの演奏会だったようで、これを選んだのがいけなかったのかもしれません。

インターネットで楽友協会ホールを検索すると上位にこのモーツアルト楽団のページに来ますので皆さんも注意して下さい。

ヨーロッパのコンサートホールで音楽を聴く(2) -ベルリン・フィルハーモニーコンサートホール-

ヨーロッパのコンサートホールで音楽を聴くの第2弾はベルリンフィルハーモニーコンサートホールです。プラハに滞在していましたがこのホールの音を聞きたかったので特急で片道5時間の道のりを移動して、コンサートの日はベルリンに泊まりました。

<日時・場所・曲目>
6/29(金)ベルリンフィルハーモニーコンサートホール
演奏:komische oper berlin
指揮:PatrickLange
曲目
ジマーマン
メンデルスゾーン/バイオリン協奏曲op.64
ストラビンスキー春の祭典
チケット代:30ユーロ(約3000円)
シート:2列目(最前列の真ん中辺)

ホールを外から見る
中はこんな感じ、中が複雑なだけに、入り口もかなり複雑な構造

<ホールの感想>
このホール実際に見てみると結構古い感じがします。(写真HPではすごくきれいなんですけどね)。コンサートの値段は30ユーロ(3000円)で円高を考慮しても相当安い。ベルリンは日本と同じく物価が高いのに、それでこの値段てどうなっているんでしょうか。

コンサートホールには4、50本のマイクがあらかじめつるされていて、おそらく必要な際は新たなマイクセッティングなしに録音(集音)できるようになっていました。
座った席は最前列の中央ふきんでした。ホールの性格を知るにはもう少し後ろの方がよかったかもしれません。
席数は後ろや横にも結構な数の席があります。当日は金曜の夜ということもあってか8割方入っていました。
サントリーホールはこのホールを真似たという話をきいたのですがこのホールはサントリーホールよりもミューザ川崎の方が構造的には似ていると思います。

<曲目とその感想>
ジマーマン、変な曲映画の効果音のような音でわざわざオーケストラでやる必要もないんじゃないいかと思えるような曲。

2曲目がメンデルスゾーンのバイオリン協奏曲でだれでも聞けば「あ、これきいたことある」といわれそうな有名な曲でした。ここのホールの音はエッジのきいたはっきりとした音でどちらかと言うと無機質な感じの音になります。弦楽器の柔らかさ滑らかさ豊かさみたいなものはほとんどきこえてきません。席で聞こえる音量は結構大きいとは思いますがスメタナホールよりもやや小さい音になります(といってもサントリーホールよりも大きい音ですが)。座席位置のせいもあると思うのですが残響音は全く聞こえません。
木管楽器の音は弱くて存在感がありません。
ただこのホール太鼓の音が何故かズシーンと響くすごく迫力ある音になります。
それとピチカートの音が弱いです。スメタナホールではズンズンと胴体に共鳴していた音がここではツンツンと糸をはじいているような音とになってしまいます。

それとこのホールではメンデルスゾーンの曲での拍手喝采のあとアンコール曲(バイオリンのソロ)を演奏していました。

春の祭典は演奏者が増えて70人くらいいたのではと思います。音量はそれなりに取れますが、でもなんか迫力ある音ではなかったですね。ただ高音が大きいみたいな・・・。

ドイツはルールのうるさい国ですが、演奏中に結構咳をする人が多くかなり耳障りでした。また服装もプラハよりもラフな感じの人も2割りくらいいました。

<このホールの総評>
このホールは低音と高音のバランスが悪いです。低音がよく聞こえないので、快感につながる迫力が出ないのです。弦の音もややキツメの感じで心地よい音という方向ではありません(といより普通かな?)。吹奏楽器やピチカートも弱いです。中の構造は相当に力の入った斬新なアイデアではありますが、音響的な結果は残念なものになっていると思います。「ナイストライ」といったところでしょうか。

ステージはこんな感じです
後ろも結構複雑に切り込んでいる構造
ステージ横を撮るとこんな感じ
ステージの天井の様子、拡散板が吊るしてある、低音には効果がないでしょう

ヨーロッパのコンサートホールで音楽を聴く(1) -プラハ・スメタナホール-

ヨーロパのコンサートホールでクラシックを聴いて来ましたので感想を書いてみたいと思います。

<日時・場所・曲目>
6/28(木)プラハ,プラハ市民会館(スメタナホール)
演奏:チェコ国立交響楽団
指揮:Libor Pešek
マーラー,ベートーベン運命
チケット代:750コルネ(約3000円)
シート:6列目(比較的前の方の真ん中辺)
構成:コントラバス3本チェロ6本バイオリン20くらい
マイクセッティグ:20本位常設のよう(当日はTVカメラが入っていました)

<感想>
(鑑賞中のメモを元に転載しました、感想の羅列になりますがご容赦を)
指揮者は知らないのですが(詳しくないので)癖のない指揮です。
ホールの残響は以外と少なく聞こえました。特に残響音が聞こえるというふうではないのです。音の大きさはかなり大きく、迫力があります。ステレオを最大音量にしたくらいでしょうか。日本のコンサートホールでは例え最前列でもこの音量にならないと思います。ホール自体が小さいので音量がとれるのだと思います。

ステージは狭く演奏者はおしくらまんじゅうの様です。
音質は中低音が滑らかで芳醇厚みのある音、木管楽器が太い音をだしています。

ホルン(チューバ?)ソロでも音が大きく低音を持ち上げたように聞こえます。フルートのソロも力強い音が出てオーケストラに負けない立派な音。全体的に吹奏楽器の音質が非常に良い。

今回運命を聴いて思ったのですが、この曲は非常に立体的でした。右でチェロがチャーララチャララとやって今度は左でバイオリンでがチャーララチャララと返し、さらにうしろで吹奏楽器がチャッチャチャチャと応酬するような、音を意図的に回しているのですね。今回初めて気づきました。

この運命は今まで聞いた交響曲の中で一番いい音質でした。

それと終わった後は拍手喝采でブラボーの声もありましたが、基本的にアンコールはやりません。私もその方がいいと思います。本曲の演奏に全力を注いだわけですからおまけをつけろと言うのはそもそも失礼な話です。

もちろん演奏はうまいですよ。私は音楽には詳しくないのですがそういう素人が聴いても上手さがわかるくらい。弦楽器なんか一糸乱れずしかも表現力が非常に豊かです。あえて工学的に言うと例えばバイオリンの演奏の時間差が10ms内に収まっているのでは?という感じ(うーん、全然伝わってないですね)。音程が怪しい人などは皆無ですし(この人演奏大丈夫かな?なんて心配する必要ありませんし)、音の表情みたいなものが節によって(楽章によって?)ころころ変わるのです。運命では弾いている人も乗っている感じで気持ち良さそうでした。曲が良いと演奏者ものれるのでしょうね。

それと吹奏楽器が物凄くいい音を出していて、しかも存在感があるのにびっくりしました。日本のコンサートホールで聴くと聴こえるか聞こえないか位の音量なのですが、こちらでは弦楽器を同じくらいの存在感があるますし、特にファゴット、チューバの低音がズシンとくるので、これまたオーケストラ全体のの厚みを増しているのです。

このホールは中心地にあって(有楽町みたいなところ)しかもホールの前に車をただで停められるのも日本から見たらすごいですね。

聴いた演奏はこれ(外壁のポスターを撮りました)
スメタナホール(これが市民会館だというのだから凄い)
エントランス(ロビー)の様子、この階段を上がって中に入っていきます

ホール前面の写真

観客がある程度入ったところで後ろを向いてとった写真

天井はこんな感じでわかりにくいかもしれませんがアーチ型というかRになっています

チェコは物価が安いのです。と言うより、社会主義国で特に工業製品が強いわけではないので、通貨が弱いのだと思います。チェコの通貨はコルナでユーロではありません。物の値段で言うと日本の1/3から1/4位です。ですのでビールも安い。チェコのビールはとても美味しいのです。アルコール度数も低めで水代わりみたいなもんでしょうか?
コンサートの後は近くの広場のテラスでビール、ジョッキ一杯150円位で超安い

飲みかけの写真ですみません